原発事故子ども・被災者支援法推進自治体議員連盟の佐藤代表共同代表らが9月19日、
復興庁に基本方針に対する意見書を復興庁に手渡しされました。
以下、意見書の内容です。
2013年9月19日
復興大臣 根本匠 殿
「原発事故子ども・被災者支援法」推進自治体議員連盟
共同代表 佐藤和良(いわき市議会議員)
同 山田 実 (滋賀県議会議員)
同 大野博美 (佐倉市議会議員)
連絡先:〒970-8686 福島県いわき市平梅本21
TEL 0246-22-1111(代表)内線4132
E-mail kazu_obr@f3.dion.ne.jp
「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」に対する意見書
8月30日、復興庁は「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(以下「法」)の「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」(「基本方針案」)を公表した。
福島原発事故は2年6ヶ月が経過しても、収束の見通しさえたたず、被災者は今なお15万人余がふるさとを追われ、家族や地域が分断されたまま、応急仮設住宅をはじめ全国で避難生活を強いられている。困難と疲弊を深める被災者は、一刻も早い法の理念に基づく具体的施策の実現を望んできたが、法の施行から「基本方針案」の策定・公表まで1年2か月の間、復興庁が被災者の深刻な状況を放置したことは、怠慢の誹りを免れない。
法は、被災当時者である住民・避難者からの意見反映のための措置をとることを明記しており、当事者からの意見聴取は必要不可欠な手続である。にもかかわらず、復興庁は公聴会開催等の措置を事前に講ずることなく「基本方針案」を公表し、短期間のパブリックコメントや福島市・東京都での説明会によって、10月国会開会前に閣議決定しようとしていることは、あまりに拙速である。
この際、復興庁は、パブリックコメント期間を1か月延長し、福島県内をはじめ全国各地の避難者、放射性物質汚染対処特措法に基づく汚染状況重点調査地域の指定地域などを考慮し、全国各地で公聴会を開催して、より多くの被災者から直接、意見聴取を行うべきである。
被災者に寄り添い支援を進めてきた本自治体議員連盟は、法に基づく基本方針の策定にあたって、8月30日付「基本方針案」を撤回し、被災当事者の意見を聴取して、「健康被害を未然に防止する観点から放射線量の低減及び健康管理に万全を期する」との法の基本理念に基づく、新たな基本方針の策定と具体的施策の実現を要望し、以下意見を述べる。
記
1.支援対象地域について
(1) 支援対象地域は、福島県内の33市町村のみでなく、年間追加被曝線量が国際放射線防護委員会(ICRP)勧告の一般公衆の被ばく限度量である年間1mSv以上となる全地域及び福島県の全域とすること。
(2)準支援対象地域は、支援対象地域より広い地域で、高線量や汚染が観測・確認された地域でも適切な支援が実施されるよう拡大すること。
2.汚染状況の調査等、除染の継続的かつ迅速な実施等について
(1)汚染調査は、α核種・β核種を含め放射性物質の種類毎にきめ細かく実施すること。
(2)子どもの暮らしや学び・遊びの場などの除染等を早急に実施すること。
(3)各家庭の建物や庭などの除染費用の助成制度を整備すること。
3.支援対象地域で生活する被災者への支援について
(1)心的ストレスへの心のケアやサポート体制を整備すること。
(2)屋内公園や屋内運動場などの運動施設を整備すること。
(3)子どもたちの宿泊移動教室や長期休暇時のリフレッシュ保養を制度化すること。
(4)心身の健康保持のため保護者等の保養休暇制度を創設すること
(5)特に学校・園の給食や妊産婦の食事などを中心に、汚染のない食材の提供などの枠組みを整備すること。
(6)教職員に対する低線量被曝に関する放射線防護教育を実施すること。その場合、法第一条で明記された「放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていない」という観点を十分に踏まえ、既成の安全論のみに依拠せず、危険性を指摘する主張や意見、予防原則の考え方なども重視すること。
4.支援対象地域以外で生活する被災者への支援について
(1)移動支援のため高速道路の乗降区間内利用等の改善を図ること。また、自家用車や高速道路以外の移動支援も整備すること。
(2)住宅提供(住宅借上制度)の新規受付の再開、提供期間の延長、転居等の柔軟な運用がなされるよう、国が責任を持つこと。
(3)母子避難に伴う託児施設の確保や移動先における就学・就業支援の促進・拡大を図ること。
(4)家族と離れて暮らす子どもに対する各種支援を進めること。
5.放射線による健康への影響に関する調査、医療の提供等および国際的な連携協力について
(1)2011年3月11日に支援対象地域にいた全ての被災者に健康管理手帳を交付すること。
(2) 2011年3月11日に支援対象地域にいた全ての被災者の定期的な健康診断、子どもの生涯にわたる健康診断を実施すること。
(3)甲状腺がんの未然防止のために、現在実施されている福島県の県民健康管理調査に国が積極的に関与し、国の責任において、「早期発見」「早期治療」のために現状を是正すること。
(4)血液検査、尿検査等の追加、市町村の検査体制確立にむけた財政援助、甲状腺検査等の拠点病院の確保など、抜本的な検査体制の確立を図ること。
(5)大人も含め全被災者の医療費負担の減免を行うこと。
(6)チェルノブイリ事故による影響について、小児甲状腺癌以外の健康被害に関する最新の医学的知見や報告(事故25周年国際会議の報告等を含む)などの情報の収集や調査研究を進め、今後の対策に活かすこと
(7)健康調査や医療については、法の第一条や原子力規制委員会設置法の参院付帯決議を踏まえ、ICRPの知見や基準のみならず、ECRRなどの主張も参考にすること。
6.意見の反映等および法の見直しについて
(1)被災者の意見を反映するため常設の被災者等協議会を設置し、施策策定に参画させること。
(2)支援対象に指定された地域を「放射線量に係る調査の結果に基づき、毎年支援対象地域等の対象となる区域を見直す」(附則第2項)に基づき指定から除外する場合は慎重に対処し、健康調査・医療提供など必要な支援策が継続できるようにすること。
(3)施策の拡充や見直しにあたっては、被災者の声はもちろん、支援活動に従事する者などの意見も聴取すること。
以上
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